空き家は年々増え続けています。
総務省が行った2018年の住宅・土地統計調査では全国の空き家の総数は849万戸になり20年で約1.5倍増加しました。
気付いたら近所に空き家が増えている。
実家も空き家になるかもしれない。
自分の家はどうなる。
空き家問題は身近な問題です。
そこでここでは
「近所に空き家があるけどどうして壊さないの?」
「売ったり、貸したりすればいいのにどうして空き家のままなの?」
「空き家のままにしておいて維持費は大変じゃないの」
といった疑問や悩みについて解説しています。
この記事の目次
空き家が増えている理由
出典:「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001518774.pdf)
国土交通省が出している「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」の資料を見ると空き家は年々増え続けていて、1998年から2018年の20年間で約1.5倍増えています。
どうしてこんなに空き家が増え続けているのでしょうか?
その理由は・・・
- 少子高齢化による人口減少
- 新築住宅の増加
- 相続問題
- 固定資産税の軽減措置
少子高齢化による人口減少
少子高齢化とは、高齢者の割合が多い「高齢化」と出生率が低く若者が少ない「少子化」が同時に進行していることです。
日本は少子高齢化によって年々人口が減少しています。
そのため家に住んでいた人(高齢者)が亡くなると相続する人(若者)がおらず空き家が増えていきます。
新築住宅の増加
人口減少にもかかわらず新築住宅は増加しています。
その理由の一つがライフスタイルの変化です。
以前は、おじいちゃん・おばあちゃん、お父さん・お母さん、子供達が1件の住宅に住む。というように何世代かが1件の住宅に住んでいました。
それが現在では1世代が1件の住宅に住むようになりました。
なので新築住宅は増加していき、実家は空き家になっていくという状態になってしまいます。
相続問題
空き家の取得方法で最も多いのが「相続」です。
相続人が一人であればそれほど問題にはなりませんが、複数いる場合は空き家の原因になります。
相続人全員の同意がなければ物件の処分や売却などの手続きを行うことができないからです。
そのため話し合いがまとまらないとそのまま空き家として放置されます。
固定資産税の軽減措置
固定資産税は土地と住宅にそれぞれかかります。
住宅の固定資産税は建物が古くなるにつれ税額も安くなっていきます。
土地の固定資産税は地価(土地の価格)によって決められます。
地価が変動すれば税額も見直されますが、建物と違い年月が経つと安くなるものではありません。
ただし、住宅用地の特例により住宅が建っていれば土地の固定資産税は最大で1/6に軽減されます。
つまり、
空き家になっても住宅を解体しない限り土地の固定資産税は最大1/6に軽減されるが、
空き家を解体してさら地にすると軽減措置がなくなり住宅が建っていたときの固定資産税より最大で6倍の固定資産税を払うことになります。
そのため空き家が放置されたままになってしまう一因になるのです。
ただし、特定空き家に指定された場合、税の減額措置が適用されなくなるため固定資産税が高くなります。
空き家の現状
fa-hand-o-down
- 空き家は相続が半数以上
- 所有者の約3割が遠隔地に住んでいる
- 空き家の約7割が昭和55年以前に建てられたもの
- 今後も「空き家にしておく」が約3割
空き家は相続が半数以上
空き家の取得方法は相続が54.6%となっています。
つまり家の所有者が亡くなって相続してもそこには住まないため空き家になるといういことです。
出典:「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001518774.pdf)
所有者の約3割が遠隔地に住んでいる
空き家から車や電車などで1時間以上かかるところに住んでいる所有者が28.2%です。
空き家の約7割が昭和55年以前に建てられたもの
空き家の69.1%が昭和55年以前に建てられたものです。
現在でも適用されている「新耐震基準」が施工されたのが昭和56年6月1日からです。
「新耐震基準」では震度6強~7程度の揺れでも家屋が倒壊・崩壊しないことを基準としています。
空き家の約7割が現在の新耐震基準を以前に建設されたものということです。
出典:「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001518774.pdf)
今後も「空き家にしておく」が約3割
空き家を今後どう利用していくかということに関しては、28%が空き家にしておくでした。
また空き家にしておく理由では「物置として必要」が60.3%で最も多く、次に「解体費用をかけたくない」が46.9%、「さら地にしても使い道がない」が36.7%でした。
出典:「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001518774.pdf)
空き家が放置される理由
- すぐには困らない
- 費用をかけたくない
- 売却・賃貸したいが需要が少ない
すぐには困らない
空き家を相続で取得してもすぐに困ることはありません。
逆に家以外の家具なども一緒に相続するため物置として空き家は必要です。
さらに築年数が古い一戸建ては固定資産税が安くなります。例えば築50年以上の1戸建てであれば固定資産税は1~2万円程度です。
また空き家を壊して更地にすると軽減措置を受けられず固定資産税が高くなってしまいます。
費用をかけたくない
空き家の70%以上が昭和55年以前に建てられたものです。
そのため空き家を売却・賃貸するにしても整備費用やリフォーム費用がかかります。また解体するにしても解体費用がかかります。
売却・賃貸したいが需要が少ない
地方にある空き家だとそもそも住む人が少ないです。また一戸建ては築年数が20年を境に建物の価値が大幅に下落します。
さらにそういった地方の空き家に対応してくれる不動産会社が少ないといった理由もあります。
また、空き家の金額がいくら安かったとしても築年数が古いものだとリフォームや改修などの維持費がかかってくるため購入を控えてしまいます。
空き家を放置していたらどうなる
- 固定資産税が高くなる
- 解体されて解体費用を請求される
空き家でもしっかりと管理されていれば問題はありません。
ただし、どうしても人が住んでいない空き家は風通しの悪さなどが原因で老朽化の進行が早くなります。
老朽化が進んで倒壊して周りや人に損害を与えた場合は賠償責任が生じます。
また樹木が伸び放題になったり、雑草が生い茂ったままになったりすると、野生動物が住みついたり、放火の原因になったりします。
そういったリスクがあるにもかかわらず多くの空き家が放置されて増え続けてきました。
そのため2015年に空き家対策特別措置法(あきやたいさくとくべつそちほう)が施行されました。
これにより
「倒壊などの著しく保安上危険となる恐れがある状態」
「著しく衛生上有害となる恐れがある状態」
「著しく景観を損なっている状態」
「放置することが不適切である状態」
のいずれかにが移動する空き家は特定空き家に指定されます。
特定空き家に指定された場合、住宅用の固定資産税の軽減措置が解除されます。
つまり固定資産税が最大で6倍になります。
そして行政からしっかり管理するように指導や勧告が入ります。従わない場合は50万円以下の過料が発生します。
それでも放置したままだと最終的には自治体の行政代執行により空き家を解体してしまいます。かかった解体費用等は所有者に請求されます。
さらに今年(2023年)の国会に提出された空き家対策特別措置法改正案では、特定空き家に加えて管理不全空き家が新たに設けられます。
管理不全空き家は倒壊の恐れはすぐにはないが放置すると特定空き家になる可能性のある空き家が認定されます。
例えば、適切に管理されておらず窓や屋根の一部が破損していたり、外壁の一部がはがれいるような物件です。
管理不全空き家に指定されると固定資産税の住宅用地特例が解除され固定資産税が最大で6倍になる恐れがあります。
出典:「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001518774.pdf)
まとめ
空き家になったとしても固定資産税や光熱費などの維持費があまりかからなければすぐには困りません。
逆にどうにか売ったり、貸したり、壊したりしようとするとお金がかかります。
資産価値がないような空き家だとなおさら後回しにしてしまうでしょう。
ただ今後は空き家を増やさないための対策が増えてくるようになるでしょう。
放置したままだと固定資産税が高くなったりする可能性があります。
近所の空き家で困っている場合は自治体に相談して対処してもらいましょう。
空き家を取得したときは「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されないように適切な管理を続けることが重要です。
できれば空き家になる前に親族で早めに話し合っておければ空き家のトラブルを未然に防ぐことができます。